過失相殺について①
過失相殺とは、被害者が事故発生や損害の拡大に落ち度があった場合、損害賠償額が減額される制度のことをいいます。
例えば、加害者に対する損害賠償額が1000万円と認定されても、過失割合が20パーセントと認定された場合、損害賠償額が800万円【1000万円×(100%-20%)】に減額されてしまいます。
治療費に関しても、被害者の過失部分に関しては、自己負担になってしまいます。
例えば、治療費が100万円かかったとしても、上記の具体例のように過失割合が20パーセントと認定された場合には、治療費の内、20万円(100万円×20%)が自己負担になります。
このように、過失相殺の制度は、損害額を大きく左右します。
但し、過失割合をそのまま適用すると、過失割合が高い被害者には、今後の生活や治療の観点から酷であります。
そこで、被害者を救済するという目的から、自賠責保険の範囲内においては、被害者に過失があったとしても、その過失割合分がそのまま減額されません。
具体的には、自賠責保険金の範囲内においては、後遺障害又は死亡に係るものに関して、以下のとおりになっていて、過失割合分がそのまま減額されずに、自賠責保険金を受け取ることができます。
被害者の過失割合 減額割合
7割未満 減額なし
7割以上8割未満 2割減額
8割以上9割未満 3割減額
9割以上10割未満 5割減額
また、被害者の過失が大きい場合、自賠責保険金の被害者請求を経ずに訴え提起をすると、認容額が被害者請求によって得られる自賠責保険金より低くなる可能性があるので注意が必要です。これは、自賠責保険では上記のとおり、被害者に重大な過失がある場合にのみ減額を行いますが、裁判では、事故状況に応じた過失相殺がなされるためです。